<助成団体活動取材ノート> Vol,20 津野復光隊

津野復光隊の渡邉美佐さんにお話を伺いました。

津野復光隊は、被災地である長野市津野地区の住民の方が中心となって、被災農地の復旧・復興を目的に被災直後から活動をしてきた団体です。

その当時の活動から現在のコミュニティ活動のことまで、幅広くお話をお聞きしました。

「この辺りは私も含めみんなリンゴ農家ですから、農地の復旧は生活に直結する喫緊の課題でした。しかも、農地のことは所有者や営農状況など地元の人間じゃないとわからないので、『自分たちが動くしかない!』と思って無我夢中で動きだしました。」と渡邉さんは当時を振り返ります。

農地の泥出し作業に対しては、JAや災害支援団体による「信州農業再生復興ボランティアプロジェクト」が立ち上がり、民間と行政が協働して農地復旧のためのボランティアを受け入れる取り組みが始まりましたが、せっかくボランティアが来てくれても、それをコーディネートできる地元の人がいなければ、どの農地で作業すればいいのか右往左往することになります。そこで、津野地区では津野復光隊のみなさんが、拡大地図を用意して地区の現状を色分けしてわかりやすく可視化し、「ここが終わったから次はここ」と、もれなく作業を進めたそうです。りんごの木の春の消毒の時期までに土壌復旧が終わり「本当によかった」と笑顔を見せる渡邉さん。よほどの危機感をもって活動されてきたことがお話から伝わってきました。

甚大な被害を受けた津野地区では、住民のほとんどの方が地域内に居住することができなくなり、地域コミュニティの形成が困難になってしまいました。そうした現状を心配した女性たちが中心となり、津野公会堂を拠点に毎週「女子会」を開いています。被害を受けた公会堂の修繕も自分たちで行い、備品も整備し、地区から離れていても寄り集まれる場所をつくり、賑わいを戻そうと活動されています。「女子会」では、進められている公共工事のことや小学校のこと、地域のこれからのことなど様々な地域のことが話題になり、貴重な情報収集の場にもなっています。7月からは月に1回のおばあちゃんたちの集まり「ぺちゃくちゃ会」も始まったそうです。

「住民のみなさんの気持ちが離れてしまうのが心配です。住宅を再建するかどうか悩んでいる人が、公会堂での集まりに来て他の人の話を聞くことで判断できることもあるかもしれないと思うんです。」と話す渡邉さん。

今回の災害がきっかけで地区を離れてしまう世帯は少なくないのではと心配する渡邉さんですが、一方で、「災害が起きなくてもいずれ人は減っていく。それが災害によって短縮された。」と冷静に捉えてもいます。そして、それに立ち向かうための方向性もすでに見据えている様子で、キーワードは「関係人口」とのこと。地域のファンと地域住民がつながり合う魅力ある津野地区、とても楽しみです!

-取材:2020.7月-