<助成団体活動取材ノート>vol.31 上田電鉄別所線ガイドボランティアチーム

2021年3月28日、令和元年東日本台風(19号)の影響で一部区間の運休が続いていた上田電鉄別所線が1年5か月ぶりに全線開通しました。再開を喜ぶ人々の中で、ひときわ目を引いた袴(はかま)姿の学生たち。上田市や別所線沿線の魅力を多くの方にお届けしたいと活動する上田女子短期大学「上田電鉄別所線ガイドボランティアチーム」の皆さんにお話を伺いました。

卒業生のラストランになった全線開通記念列車内でのガイド(ちょうど赤い橋を渡るところ)

初代ガイドを務めた寺島ちづるさん(現・同短大職員)は、チームが誕生した当時を「私が2年生だった時、上田電鉄さんより別所線再生支援協議会の座長だった先生に『別所線と学生とのコラボ』のお話があり、半年余り検討を重ねた結果、16年10月1日から『和装・袴姿でのガイド』がはじまりました」と振り返りました。最初のメンバーは「楽しそう」「やってみたい」と集まった1~2年生の5~6人。空き時間を使って、上田市と別所線沿線の観光スポット、地域にまつわる話などを自分たちで調べまとめ、土・日曜日、祝日など月に3回ほど車両内でお客さんへガイドしていたそうです。

学生ガイドは、その後も代々受け継がれ、4年目に入った19年10月、あの台風に見舞われました。増水で千曲川堤防が削られ、一部崩落した赤い橋は別所線のシンボル的な存在でした。ガイドの機会を失った学生たちは翌月の学園祭「学海祭」に袴姿で参加。募金箱を持って歩きまわり、集まったお金を「上田市ふるさと寄附金『別所線応援プロジェクト』」に寄贈しました。一日も早い復旧とガイドの再開を待ち望む日々が続きました。年が明けた1月、一部区間の運転再開とともに、ようやくガイドも再開するかと思った矢先、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、車内ガイドは休止となりました。

お話を伺った石山奏恵さん(左)と飯田茜さん(右)

車内でのガイドはできない。けれど、上田市や別所線沿線の魅力を多くの人へ伝えたい。そんな学生たちの想いが「バーチャル別所線ガイド」になりました。動画編集を担当した飯田茜さんは「夏休みに撮影して、2週間ぐらいで編集しました。撮影は初めての試みで、カメラに向かって話すのは、とても緊張した」とのこと。また、もともと上田市生まれの飯田さんは「10数年住んでいて地元の知らないことがたくさんあった。上田には何もないと思っていたが、思ったよりいろいろあると再発見した。それまで意識していなかった別所線を身近に感じ、特別な存在になった。知らない人に広めていきたい。」と、地元の魅力に気づいたそうです。

「緊張した」というバーchくぁる用動画の撮影

5代目ガイドになる新潟県出身の石山奏恵さんは「バーチャルガイドに、今回開通した上田駅~城下駅間を加えて『全線版』を完成させたい。新学期を迎え新たに加わったメンバー現在10名といっしょに、別所線のことをもっと調べて、みんなで広めたい。県外から来た自分は、上田のことをぜんぜん知らなかったけれど、ガイドのために自分たちで調べて知って、上田が好きになった。いまはコロナ禍で難しいけれど、これからは住んでいる方々との交流も深めたい」と、目を輝かせていました。

別所線車内から撮影した映像と重ね合わせる編集作業

そんな二人に共通する願いは「早く別所線に乗りながらガイドする!」こと。

一乗客として学生ガイドの活躍を見たい。一日も早い実現をいっしょに願おうと思いました。それまでしばらくは、バーチャルで別所線に乗っている気持ちをお楽しみください。ぜひ、こちらから↓ご覧ください。http://www.uedawjc.ac.jp/chiiki_renkei/bessyoline.html

取材日2021年4月17日(取材・文責:吉田百助)

写真提供:上田電鉄別所線ガイドボランティアチーム