<助成団体活動取材ノート> Vol,17 かわせみ中部長野支部

かわせみ中部長野支部さんに取材のお願いをしたところ、「ちょうど活動中の現場があるから潜ってみる?」と言われ、実はそれほど深く考えもせず「潜りたいです!」と答えてしまい、ある程度の作業装備をして現場に向かうこととなりました。今回は活動体験&取材ノートです。

かわせみ中部長野支部さんは、浸水被災住宅の復旧支援活動として主に床下の泥の除去・排出活動をされています。「潜る」というのは「床下に潜る」という意味なのです。

場所は、長野市篠ノ井のとあるお宅。長野市内外各地から集まったボランティアの方々と作業を開始します。私以外はみなさん常連さんで、慣れた手順でまずは和室の床板の一部を人が出入りできる程度剥がし、床下からの土ぼこりが部屋中に飛散しないようしっかりと養生します。

そして、大体の人員配置と役割を決めて、身支度を整えて次々と床下へ入っていきます。が、私は初めてなので、おぼつかない手つきで防護服を身に着け、借用したゴーグルやヘッドライト、防塵マスクを不器用に装着します。7月の梅雨時にこの装備だけでも応えます。

準備中の筆者(手前)【写真提供:かわせみ中部】

そしてようやく床下へ。当然ですが、狭い穴から入るので穴に入って一旦足を延ばして座り、そして寝転んでズルズルと這いながら進むのです。地面から床板までの高さはだいたい60センチくらいでしょうか。一度潜ったら出るまでずっと腹ばい、あおむけ、横向きのどれかの体制となります。

「蒸し暑くて狭くて暗いので、途中で辛くなるかもしれません。その時はすぐに出ようと動かないで、その場でじっとしてみてください。土が意外とヒンヤリして気持ちが落ち着いてきますから。焦って動くとパニックになります。」

と、この日私の世話役をしてくれた「災害ボランティアグループ雷鳥」の清水さんが教えてくれました。確かに、蒸し暑く窮屈な体制での作業なのですぐに息が上がって苦しくなり、早く脱出したい衝動にかられましたが、その言葉のおかげで落ち着きました。

床下はこのような状況になっていました。

【写真提供:かわせみ中部】

2週間くらい前から送風機をかけていたので、だいぶ乾いて作業するには良い状態になっていました。床束や大引き、根太などの床下の構造物に付着している泥をへらやブラシで掻き落とし、土の上に堆積した泥と一緒に土嚢袋に詰めて排出するのが作業内容です。何度も言いますが、全部寝そべった状態での作業です。

かわせみさんは、家主さんに極力負担がかからないよう、床板を剥がす部分は必要最小限にし、養生シートで作業空間をしっかり囲うことで粉塵の飛散を防ぎ、家財等は日常のそのままで作業を行っています。

「床上浸水なら仕方ないと思いますが、床下浸水の場合は床板を全部剥がさなくても作業は可能です。全部剥がしたらまた張りなおさないといけないし費用面でも家主さんの負担になってしまいます。」と、かわせみ中部代表の長谷川知里さん。

長野市南部を中心に住宅復旧支援をされているかわせみさんですが、ほとんどの住宅が被害を受けているエリアでも、今回のような泥の排出作業の要請はためらう雰囲気があるといいます。

「昨年の台風19号被害では、長野市北部があまりの被害の大きさだったため、床下浸水の被災者の方が遠慮している空気があるのではないか。」と、かわせみ中部長野支部代表の熊原隆司さんはおっしゃいます。

「床下浸水だから放置しても良いというものではないんです。壁の断熱材が水を吸い上げて壁の中でカビが生えているケースもあります。水を吸ったら何年も乾かないんですよ。カビだけでなく腐朽菌が繁殖したら家の構造に影響します。私たちボランティアが作業に入って点検することで、予防ができるんですが。」と長谷川さん。

この日、作業の合間をみて近隣の住宅を1軒1軒訪問し、かわせみさんの活動について周知をされていました。

最近は、かわせみさんの活動をテレビで見たという須坂市や佐久市といった長野市外からの要請もあるとのことですが、コロナウィルス感染症の影響でボランティアが集められない状況の中、人員確保が難しく、遠方での活動にはどうしても限界があると、かわせみのお二人はもどかしそうにお話されます。

「コロナのような影響で外部からの支援が難しくなることを考えると、地元でノウハウを蓄積する必要があります。今回、かわせみの長野支部もできましたし、災害ボランティアグループ雷鳥も担い手になってくれているように、地元での人材育成が非常に大事です。」と長谷川さんは言われます。継続した支援活動には、やはり核となる人材が必要ですね。

公共工事や住宅の公費解体は目に見える形で進んでいきますが、見えない、あるいは見えにくいけれど必要な支援はまだまだたくさんあるのかもしれないと、かわせみさんの現場体験と取材を通じ感じました。

本日の作業メンバーのみなさん
(前列右端:熊原さん、後列左から2番目:長谷川さん)

-取材日:2020.7.11-