<助成団体活動取材ノート> Vol,04 集楽元快&豊野住民自治協議会

豊野地区にある「まちの縁側 ぬくぬく亭」で「集楽元快」清水厚子さんと「豊野住民自治協議会」後藤つか沙さんにお話を伺いました。

豊野住民自治協議会 後藤さん(左)と集楽元快 清水さん(右)

まずは、集楽元快の清水さんのお話。

清水さんは、ケースワーカー歴38年という大ベテランの経験をお持ちで、これまで様々な組織で日常生活に悩みを抱えている方に寄り添っていらっしゃいました。

台風被害のあと、「今必要ですぐできることをやろう」と、まず始められたのが物資のあっせんだったそうです。地元の農産物加工所や直売所の運営もされているご経験もあり、いろんな方に「清水さんやってよ」と頼られる存在だったことと思います。物資のあっせんから発展した形で炊き出し支援が始まったそうです。

「私は炊き出しにこだわっているわけじゃないの。その時必要な支援をしたいの。」と言われる清水さん。そして、「支援を受けた方には物をくださった人の思いを感じてほしい。くださった人の思いを心に残したい。」とおっしゃいます。この言葉に私はハッとしました。決して恩着せがましく言っているのではなく、「物とともに思いを受けとる」ことで、くれた人ともらった人がつながり合える、という意味だと感じました。

新型コロナウィルスの影響で人を集めて行う炊き出しが出来なくなってからは、必要な方に個別に配食をする取り組みに切り替えて必要な支援をされてきました。ただ、清水さんの思いは単に食事を提供するだけではなく、食を通じて人と人がつながる環境をつくること。だから、ぬくぬく亭にみんな集まっておしゃべりしながら食事ができない今の状況は、本当に必要なことを模索する清水さんにとって歯がゆい状況と思います。ただ、それならと次の手を考えていらっしゃるお話もありましたので、どんな活動になっていくのか楽しみです。

ぬくぬく亭は、被災後の避難によりそれまで隣近所だった住民がバラバラになってしまっている状況に、人と人がつながれる、被災者もそうでない方も誰でも気軽に訪れることのできる場所として複数の団体によって立ち上げられ、共働で運営されています。

取材中には、初めて立ち寄られたという初老の男性が訪れ、「自分の地区は被災していないが、こういう場所があると聞いたので。」とおっしゃってしばらく清水さんとお話をされていかれました。同じ地区内でも被災された住民と被災されていない住民の間に距離感があるという課題はどこの地域でも共通課題で、ぬくぬく亭という居場所がつなぎ役の一つとなっていることを実感しました。

 続いて、豊野地区住民自治協議会の後藤さんにお話を伺いました。

 後藤さんもぬくぬく亭の立ち上げにかかわった方の一人で、清水さんとタッグを組んで活動されてきました。

 豊野地区住民自治協議会では、2019年1月に「我が家の防災マップ」を作成し、全戸配布をしていましたが、災害により処分されたお宅も多く、さらに事務局での保管分もすべて被害にあってしまいました。被災し豊野地区以外に住んでいる方が不安なく戻ってこられるよう、防災対策に向けた様々な取組にマップは無くてはならないもの。マップの再発行のために、ONENAGANO基金の助成金を活用していただくことになりました。

 被災前から防災への取組に力を入れておられましたが、特になるほどと思ったのが、「女性限定避難所体験」の取組です。2年前に一度行われたとのことですが、女性目線で避難所の在り方を点検することで、多くの改善点が見つかるとともに、参加した方々の関心も高まったそうです。世代別とか、子育て世帯、高校生など様々なカテゴリー別にやってみるとまた違う視点が見えてくるかもしれない、と後藤さんは意欲的に話されていました。今年度行う避難所体験は被災していない地域の方を対象に行う予定で、被災した方の話を聞いたり、炊き出しについて学んだりと、被災しなかった方にも防災への意識を高めてもらう取り組みを進めるそうです。住民の防災意識が高まれば、実際に災害が起きた際の避難所運営も住民が主体でできるかもしれない、と後藤さんは期待されています。地域の住民同士が支え合い、災害に強い地域を作って行きたいという強い思いが伝わってきました。

 現在、マップの再発行が完了し配布の段階とのことですが、地区外で避難生活をされている方への配布方法が課題とのことでした。被災後の住民活動の難しさを思い知らされました。

 お二人の活動に、これからも注目したいと思います。

-取材日:2020.6.3-